2012年8月5日(日)
横須賀美術館でおこなわれてワークショップ「さわれる美術館のつくりかた」
デルフィーヌ・アルメルさんの話はとてもよい経験になりました。
今回紹介のあった美術館はフランスの「ケ・ブランリー美術館」、
美術館でのアクセシビリティと 実際におこった問題と その解決方法 を紹介してくれました。
ケ・ブランリー美術館は、シラク大統領の時代、2006年に開館した比較的新しい美術館、
コレクションは人類博物館というか民族博物館といいましょうか、GoogleMapで上空から望むと迷路のような庭園が見られます。Musée du quai Branlyのサイトを見るとお面的なものやトーテムポール的なものの写真が表示されています。(もお絶対行きたい!)
すべての来館者は「森に迷い込む」をイメージさせる庭園の歩道に迷い込みます。歩道にはゴム素材のラインが設けられ、いわゆる点字ブロックの役割をします。
館内に入ったお客さんは車いすでも楽に登れるゆるやかなスロープを利用します。
そして、展示スペースは広い空間に…約3000点の民族美術のコレクション…。
(うわー!これは 一日 時間をとって赴く必要がありそうですね)
ケ・ブランリー美術館は、アクセシビリティを構想の柱として作られた美術館なんですね。
このアクセシビリティのコンセプトは、
開館後も問題を解決しながら工夫され更新され続けられたそうです。
作りっぱなしというのはナシです。これ大事っ
触って解る「オリエンテーションマップ」は来館者の意見を取り入れ、大きいものに作り替えたり、色をつけたり、方向の目印としてエッフェル塔の位置を加えたり、それによって多くの人が理解できる良いオリエンテーションマップになっていったのだそうです。
美術品の展示方法も試行錯誤がなされました。
開館して間もなく、多くあった意見として「会場の暗さ」が問題になりました。
会場が暗いというのはアクセシビリティの観点からはノーである。しかし光を当てて痛んでしまう 皮 木の皮 貝殻 羽毛。
ケ・ブランリー美術館は、古代から現代に至る世界の美術品・民具・衣服・装飾品、民族美術を展示しています。
妥協とのバランスをスタッフ同志、意見をいっぱい交わしたそうです。
結果、光に強いものと弱いもの、展示物によって光の当て方を変えることとなりました。
晴眼者にとっては、この輝度の観察も美術品のひとつの情報になり得るんだろうなーと、修復や保存に興味のある私はとって、この話にはワクワクさせられました。
意見を交わし考えて工夫することは、
「さわる」をコンセプトにした人形の企画展(スクリーンに映し出された写真画像はホピ族のカチーナのような人形でした)では、原寸大で本物そっくりの複製の製作を、
常設展示の「展示物の立体模型」には、設置の仕方も細やかな工夫を施すことにもつながったそうです。
そしてそれは、視覚障害者だけでなく晴眼者にも親しまれる結果を生み
さらに「暗闇の朗読会※」視覚障害者が点字の本を晴眼者に読み聞かせをするといった斬新な!企画なども生んだのだそうです。
「共有するひとつのツール」の大切さ、美術館のコンセプトも少しずつ変わっていったように思えました。
もともとアクセシビリティを第一に考えて作った美術館だから出来たことではないかと思います。
それがスタッフ関係者に考えることをやめてしまわないで、創造力を与え続けているものなのだと思います。
アルメルさんはいいました。
美術館の役割とは“人々に共通のイメージを頭に描いてもらうことではなくて、人々に感動のきっかけをあたえることなんです”
※「暗闇の朗読会」では男女2人の朗読者、詩や神話を朗読したそうです。闇の中で感覚をとぎすまして感じる世界って?!いつか体感してみたい!
musée du quai Branly(フランス語・英語) http://www.quaibranly.fr/
フランス美術館・博物館情報(日本語) http://www.museesdefrance.org/
さわれる美術館のつくりかた ―誰でもアートが楽しめる!―
2012年8月5日(日)14:00~ 横須賀美術館 ワークショップ室
講師 デルフィーヌ・アルメル(元ケ・ブランリー美術館 障害者来館促進担当) ※通訳あり
主催・協力
【主催】横須賀美術館
【企画協力】NPO法人視覚障害者芸術活動推進委員会、ギャラリーTOM