




三浦半島ふるさとのむかし話 母は語りべ
1986年 7月
編者 あしたばの会
発行者 早武忠良
出版社 暁印書館
発売 横須賀書籍出版
大内順子(横須賀市立野比中学校教頭)
茶谷次雄(横須賀市教育委員会社会教育課)
上村和弘(横須賀市教育委員会国語科指導主事)
伊村加代子(挿絵)
目次
- 堰のかっぱ(衣笠)p7
 - イボ地蔵(下宮田)p16
 - 瘡守稲荷(衣笠)p21
 - こうじ山のオーケストラ(長井)p26
 - ぽっくり地蔵(長井)p33
 - 大楠山の彼岸花(長井)p36
 - 浜せがき(長井)p44
 - おまんぎつね(鴨居)p50
 - とめ吉どんと海坊主(鴨居)p56
 - たたらの浜(鴨居)p61
 - 鵜と大蛇と観音さま(観音崎)p68
 - おないどしの一つちがい(浦賀)p79
 - 湖幡屋の札(浦賀)p86
 - 一本松のむじな(上宮田)p91
 - かっぱのわび証文(金田)p99
 - 送りぎつね(引橋)p105
 - ひげぬき場(岩戸/佐原)p113
 - もはさんときつね(追浜)p116
 - “鈴木”という姓(久里浜)p122
 - 化粧が窪(小矢部)p127
 - 夫婦岩(浦郷)p135
 - 小松が池(下宮田)p138
 - 七桶の大蛸(葉山)p143
 - どうしんぼう(葉山)p149
 - かっぱ松(逗子)p156
 - 盆の送り火(小坪)p162
 - 池子の雨乞い(池子)p166
 
1. 堰のかっぱ(衣笠)
お母さん思いの女の子トキに同情して改心するカッパのはなし
- 堰にうかぶひしの葉を枕に、ごろりと横になっていました。
 - けやきは小高い丘の上にありました。〜根元に祠が建ててありました。
 - ひしの実が腹の病に効くとはな。
 - ひとつ ひまわり花づくし/ ふたつ ふじだなふじのはな/ みつより咲いたは 寒の梅
 - 堰の場所は不明。書籍『古老の話』に出てくるカッパの場所は衣笠栄町公園付近と思われる。〒238-0031 神奈川県横須賀市衣笠栄町3丁目1−2
 
2.イボ地蔵(下宮田)
泊めてもらったお礼に、岩にお地蔵さまを刻んでくださいました。
その日から毎日祈りし、桃の咲くころにはお父さんの顔のイボがすっかりきれいになりました。
- 「この地蔵さまは深谷の円通寺の境内におりましたが、今は大矢部の清雲寺本堂の右前に子育て地蔵と並んで立っています。」
 
3.瘡守稲荷(衣笠)
- 浦賀生まれの力士、岩男波磯吉が、平作の大蔵寺にあるお稲荷さんにおこもりをして大病が直り大阪の関脇との一番にも勝つことができた。
 - そのお稲荷さんは、大蔵寺の和尚さんが祀って日夜祈り続け、江戸で流行った疱瘡が入ってくるのを防いだと伝えられていた。
 - 岩男波磯吉はその後、京都の伏見稲荷に参拝に「瘡守」といれてもらったことから「瘡守稲荷」といわれるようになった。
 
4. こうじ山のオーケストラ(長井)
漁師の茂三が助けた、鉄のわなにかかった子だぬきの恩返しは、たぬき、むじな、きつねの大楽隊、すばらしい月夜のオーケストラでした。
- 「おお、いたかんべえ、いたかんべえになぁ。」茂三は、罠をはずしてやりました。
 - 銚子沖までさんま漁に行ってきました。ところがある時、悲しいことにその中の一人がこれらにかかって死んでしまいました。
 - 残った十三人は長井にもどるなり、こうじ山のてっぺんに作られた小屋に入れられてしまいました。
 - この小屋は、村人たちの信仰を集めているぽっくり地蔵さんのわきの道をしばらく入った山の中にありました。
 - 十三人の漁師は、コレラの疑いがはれるまでの十四日間は、一歩たりとも小屋をでることは許されません。
 
5. ぽっくり地蔵(長井)
長井 こうじ山 漁師 寝たきりのじいさまと、やさしくて働き者のばあさまといっしょに暮らしていた娘、美津の願いを叶えたお地蔵様のおはなし
- 「ばあさまを楽にしてやってけえな。ばあさまを楽にしてやってけえな。」
 
6. 大楠山の彼岸花(長井)
大楠山 行方がわからなくなった七歳の男の子“りょっこ”のおはなし
- 長徳寺の裏山からもう一つ奥に入った山の、片隅の草地に彼岸花が咲いているのです。
 - そっと手を触れる“りょっこ”の顔の下で、細く真っ赤な花弁がそりかえり、かすかにうず巻くように揺れ動いています。
 - 月見草色の着物を着たその人の、花をつむ横顔を見ていると、源さん夫婦は、前にどこかであったような気がしてきました。
 - ふわふわした動物の抜毛がいっぱい落ちているのに気がつきました。
 
20. 化粧が窪(けしょうがくぼ)(小矢部)
土地の呼び名「化粧が窪」の由来、美しい女に化けたきつねのおはなし
- 衣笠小学校のあたり一帯は、昔、傾城が原(けいせいがはら)と呼ばれる野原だったそうです。“化粧が窪”は、その野原の一部分をさしたものと思われます。(「傾城」とは、妖艶なる美人の事、遊女のことをいう)
 - 小矢部村から五郎が渕(ごろうがふち)へ行く途中の広い野原に、ちょくちょくきつねが姿を現しました
 - きつねは百歳になると、美人に化けられるというからなあ