映画「マイブリッジの糸/Muybridge's Strings」は、写真家エドワード・マイブリッジを題材にした山村浩二の約13分の短編映画。
片山杜秀さんがトークをされるというので東京都写真美術館に行きました。
山村浩二さんはこの日、オタワ国際アニメーション映画祭のため、カナダのオタワに行っているそうで
ご本人のたっての希望で片山さんをお呼びしたとのこと山村浩二さん、さぞ残念がっていらっしゃるんじゃないでしょうか
映画を見終わった後、片山さんのトークが始まりました。
まず、映画に使われている音楽、バッハの「蟹のカノン」について教えてくれたよ。
カノンは、ギリシャ語で基準とか正典という意味
音楽に現れるカノンは13世紀、14世紀の合唱に多く見られ
一言でカノンといってもいろんな形式がある。
反行カノン(1人目の旋律を上下反転して2人目が唄う)
逆行カノン(複数の小節単位で2人目が1人目の旋律をリバースで唄う)などなど
アメリカとドイツでは逆行カノンのことを「蟹のカノン」と言うそうです
(なぜ蟹?!)
ちなみにイタリア、フランスでは蟹ではなく、レトログラードと言うそうです。時間をさかのぼるというイメージですね。
さて、バッハは17世紀の人。
17世紀の音楽バロックの主流はテレマン!ヘンデル!
楽しくやればいーんだよ♪そんな時代の中でバッハは異質な作曲家だったんだね
知的な遊びで耳に入るときにはなんの意味もないように感じる音楽を果敢に作曲していたバッハに、当時の偉い人!フリードリッヒ大王が即興を依頼したんですって
その時にできたのが「音楽の捧げもの」別名「蟹のカノン」でありました。
(解りやすく教えてくれるのでほんと嬉しいよ...)
それから片山さんのトークは映画の考察に入るのですが、
お話をいただいてから、何度か見させてもらって、
でも、大きいスクリーンで「マイブリッジの糸」を見るのが初めてで
そしたら細かい部分が新たに見えて来て、僕の考えていることはちょっと違うんじゃないかって思っています。と恐縮されつつ
映画の芯の部分、蟹のカノンを背景にして
マイブリッジの嫁ちゃんと子vs現代の母親と娘を描いていること、
大きい構成を説いてくれました。
マイブリッジが女性と出会って結婚するまでのシーンがすばらしい。と感激してらっしゃいました。
それからそれから
写真家マイブリッジが世間に 動く画像、映画を発見しさらしめたとき。
バッハが「蟹のカノン」を確立したときも どーだ って同じように思ったんじゃないかな とか
映画の題名が何故「蟹のカノン」ではなく「マイブリッジの糸」なんだろう
糸の画が母親の鍵盤で?さて。
時間軸の真ん中に秘密があるんじゃないか
ノアの方舟を連想させるカットが未だ解らないこと。
作品の動機を探る片山さんの目線は愉快です。
話はちょいちょい片山節炸裂しながら交錯加速しまくり
それでも最後には
瞬間を永遠にループする世界とマイブリッジの人生とバッハの蟹のカノン
来ちゃったから戻りたいわけでー
これはどんな人にも経験のある共通する気持ちですよね
きれいにまとまりました!
映画のトークはちょっとでも悪口を言うようにしているんだけど
まだまだ奥が深いようで見足りなくて、ほんとごめんなさい。
僕がマイブリッジを知ったのはフィリップ・グラスの『フォトグラファー』なんです
とも言っていましたよ
謎が謎をよぶとっても魅力的な映画であることを あらためて理解できた今回の片山さんのお話、
山村浩二さんとの対談があったらのぞいてみたいと思いました。
「マイブリッジの糸」東京都写真美術館(恵比寿ガーデンプレイス)
http://www.muybridges-strings.com/
躍動と静かなカットがバランス良くって心地の良い映画です。
山村浩二さんのサイト
http://www.yamamura-animation.jp/