「これから見回りよ」
「わーい ついてってよい?」
「では助手席に」
アライグマ・タイワンリスなどの外来種防除のために森に仕掛けた箱罠の、見回り作業におじゃましました。
「あ フキノトウ」
「おお」
箱罠にタヌキがかかっていた
箱罠の中の食べ物につられてタヌキがよくかかるそうだ。
アライグマが目的なので、私たちにとっては、タヌキは営業妨害なんですよー。と、罠の入口をあけて「ほら、出ろ」と促すし、すぐに出てこないタヌキの様子を見ながら、箱罠の入り口をワイヤーで固定し、他の作業にとりかかる。
箱の中からこちらを じーっとうかがっていたタヌキは、しばらくすると箱からのそのそと出て、ひょいひょい山の茂みに姿を消した。
「常連さんかな」
このタヌキ、罠にかかるのはこれが初めてではないようだ。
方や、箱罠の入口をあけると、一目散に箱から飛び出すタヌキもいる。
ギャン!と威嚇されることもある。噛まれたらたいへんだ。
タヌキと一概にいってもいろんな性格の個体がいるのだそうだ。
箱罠には、賞味期限切れになったビスケットとパンを設置する。
パンは、友人のパン屋さんから譲ってもらうもので、この日は、きな粉ケーキ。
賞味期限が切れているといってもとても美味しそうな香りである。
他の場所では、疥癬(かいせん)にかかったみすぼらしいタヌキが箱罠にかかっていた。
からだが弱っているから自分で餌が穫れない。病気のタヌキが罠にかかっていることは多いらしい。
さては、こんな汚いカラダのオレサマをタヌキ汁に?やれるものならやってみろ 罠なんかこわくない。なんて言っている?
...などと、戯れに思うのも、また人間の勝手なのだろう